不思議な 不思議な おむつちゃん

不思議な不思議なおむつちゃん

〜誰も知らないおむつの世界〜

排泄に影響する要素

「食事・水分摂取量」

排泄に影響する要素は沢山ありますが、一番は当然「食事・水分摂取量」です。
食事・水分摂取量で大きく左右しますから、「食事・水分摂取状況把握」が大切です。
記録ソフトで「食事・水分摂取状況把握」は、簡単に出来、排泄アセスメントやプラン変更に役立ちます。

「薬剤」

次に「薬剤」です。下剤と利尿剤が一番影響を受けます。
下剤調整は、老化による腸蠕動の影響・疾患の影響・服薬の影響等で行れます。
私の考え方は、医師が処方された薬剤に関しては、経過を観ながら状況を報告しますが、下剤を中止しようとか、減らそう等の相談は基本しません。
老化とさまざまな疾患の利用者さんに、画一的に「下剤を減らす」事の恐ろしさを知るべきだと考えます。
利尿剤は、心臓の働きが悪く浮腫等の際に投与されます。
利尿剤に関しては、多尿になるので、直ちにパッド変更を実施します。
向精神薬等も排泄に影響しますし、さまざまな薬剤が影響していると考えますが、おむつのデータを分析しながら「排泄プラン」を変更して対応します

「入浴」

次に「入浴」が排泄に影響します。
「入浴」で全⾝が暖められて、新陳代謝が促進され、入浴後の多尿や排便がデータからわかります。

「おむつ」の変わった使い方

私の施設は、全室にトイレが、有りますが、そこまでも何らかの方法を使っても行けない方は、ポータブルトイレを使って居られます。
ポータブルトイレの消臭液を使っても、個人差が有りますが、尿臭が強い方の部屋の臭いは、ポータブルトイレの底にパッドを敷きます。
パッドを使う場所が、「直接肌に接触」しているか、「30 センチ下のポータブルトイレの底」かの違いです。
パッドの尿閉じ込め効果は、信じられないくらいです。

「おむつ」施設あるある

高齢者の方は、パッドを付けていることを忘れられうっかりパッドをトイレに流されたり、パッドが汚れて証拠隠滅のために、トイレに流してしまわれます。トイレ詰まり業者の出張修理が頻発。

おむつメーカーの情報で、パッド詰まりは、「塩」が有効だと・・・。
「塩大さじ2杯」を、詰まったトイレに入れて、数時間放置、その後
大量の水で流して…成功しています。
パッド流しのトイレ詰まりは解決しました。( ^ω^)・・・科学的な理論は、「浸透圧」です。

私の最大の教科書

私の帰宅路は、交通量がほとんどない道路ですが、晩秋のかなり寒い夜、パジャマ姿で、歩いておられるおばあさんに遭遇。
車を停めて「寒いのに、どこに行かれますか?」と問うと

「墓に行こうと思って…」
「こんな夜に? 墓に行くのは、この道ではないですよ〜」明らかに挙動不審!
「寒いから送っていきますから、車に乗って〜」話がなかなかかみ合わない後に、やっと乗車。そのとたん、車中は尿臭がただよい、寒い⽇でしたが、窓を全開。
「おばあさん、名前は?」私の知らない苗字で…??
「おばあさんの家の近くに、お店屋さんは、あります?」
「酒屋さん」
「酒屋さん? 2 軒あるけど、神社の近く?それともお寺の近く?」
「墓は何処だろうか?」と会話が進みません。
とにかく酒屋さんの方向に車を運転。一軒目の酒屋さんは閉店していて、諦めて次の酒屋さんへと。
次の酒屋さんは、立ち吸(角打ち)で夜の酒飲みの方々が沢山おられました。

私がおばあさんの苗字を言うと「あぁ〜近くに一人で住んでおられるよ。
近いうちにおたくの施設に世話になられるんじゃあないかな〜」と…
「わかった、20キロ離れた所に住んでいる息子さんに連絡するから」と飲み友達の方々が相談してくださり、そのおばあさんをその方々にお任せして帰宅しました。それにしても、自宅から 700 メートル離れた場所を徘徊!
その後、度々の夜間徘徊で近所の方々から息子さんに連絡があり、独居生活限界となり、入所となられました。
今から思えば、夜間徘徊はトイレの場所が判らなくなって、歩いているうちに、どこかで放尿し、帰る所が判らなくなり徘徊⁇
入所初期の排泄状況は、布パンツでしたが、いたる箇所に放尿、使用後の水洗トイレで手洗い、便いじり、「トイレに行きませんか〜?」と声をかけても、トイレ誘導の意味を理解されず「助けてください〜」と悲鳴を上げて逃げ回られ等あらゆる面で、要介護 3 ではない様な排泄援助で困難を極めました。
加えて、観葉植物、テーブルの花、トイレットペーパー、ティシュペーパー、新聞、パズルのピース等を口に入れて、「モグモグ」。
歩行能力が優れていて、職員の一瞬の隙に様々な事が…。
全ての物品が置けないシンプルな食堂とお部屋になってしまいました。

すごく整理整頓された空間ですが・・・⁉
特に困ったのは、トイレットペーパーです。様々なアイデアを駆使して知恵比べ。
要介護4の時代は、認知症もかなり進行して、排泄意がかなり曖昧でしたが、布パンツで・使用パッドも 600cc~1,100cc で更衣回数は 15 回程度/月でした。
更衣回数を減らすために、様々なパッドや当て方を変えたり、介入の時間を変えたりしました。かなり⻑い期間このようなプラン変更を繰り返し、困難な排泄ケアに職員一同取り組みました。
しかし使用パッド 1,100cc の使用回数を増やすも、更衣回数が 24~27 回程度/月と増えてきて更衣回数が減る傾向が見えず、リハビリパンツ・パッド併用使用に踏み切りました。
この利用者の排泄の特徴は、⻑時間排泄がない状態が続き、一度に大量の排尿があるタイプで、1回の排尿量が 驚きの量で、⽇中使用の 600cc〜900cc のパッドがパンパンになってリハビリパンツ汚染、加えてズボンも汚染する状況でした。
私の考えるアウター使用枚数基準は、通常 1 か月のリハビリパンツ使用枚数は、12 枚程度です。リハビリパンツ汚染が月に 40 枚。汚染による更衣が、17〜27回/月。リハビリパンツを使う事で更衣回数は、少し減りました。

汚染ズボン・リハビリパンツ・パッドを交換するのに、3人の職員での交換作業。
1人は、気を紛らわすために、お菓子を持って優しく近づき、他の 2 人がリハビリパンツ・パッドとズボンの更衣を行い、汗だくの毎⽇でした。
パッド使用が理解できず、何度となく汚染パッドを証拠隠滅(?)の行動でトイレに流され、トイレが水浸し…。大量の排尿に対する対策がなく、毎月数回、使用パッドの種類変更や使用時間変更、パッドの当て方等の変更を繰り返しました。
⻑時間排尿がない状況では、職員は、涙ぐましい努力で、トイレ誘導をします。
トイレでは、すぐに排尿できず、腹部マッサージや陰部清拭で神経刺激を促して根気強く排尿を待ちます。排尿があれば、ラッキー!!
排尿が無ければ、リハビリパンツと高品質なパッドに頼るしか…。
それでもなかなか難しいケースで、パッドの当て方等を何度も何度もメーカーのアドバイサーの方と相談したり職員で話し合いながら、使用パッドの変更等、数百回の排泄アセスメントの連続でした。
かなり⻑い〜⻑い期間、リハビリパンツ、パッド使用が続きました。
しかしながら、認知症の更なる進行から、嚥下障害が徐々に進行し、誤嚥性肺炎の繰り返しで、体力低下によりトイレ誘導が困難で、リハビリパンツからカバータイプに変更になりました。

カバータイプ使用でも、カバー使用枚数が 25 枚/月程度で、通常の方より多い使用枚数ですが、更衣は激減しました。
使用パッドも食事量が減少し、主に 600cc 使用と成りました。
以前の様な、歩行をされていた時の様々な問題がなくなりました。
カバータイプの使用枚数が他の利用者より多いのは、一つは、利用者の体型に起因するかもしれません・・・?
人には様々な体型が、男性・女性、O 脚、X 脚、大腿部の脂肪・筋肉のつき方や、腹部のぷにゅぷにゅ肉でウエストのくびれがない等があるように、この利用者の方は、大柄で内腿のタイトな体型とウエストのくびれがない体型が更衣多発につながったと考えます。

二つ目は、排尿量が一気に多量で、一つ目に述べたような体型が災いして、非常に困難な排泄アセスメントになったと考えます。
毎月「今月も勝負!!」と排泄プランを変更しながら、月に何度もデータチェックを試みましたが、連敗の月⽇でした。

しかしながら、その勝負にも終わりが来ました。
私の排泄アセスメントの勝利ではなく、あの『晩秋の夜の徘徊おばあさん』の死亡により、約 10 年間の私の挑戦は終わりました。
沢山の方々のアセスメントを、簡単に感じる様になったのも、この利用者の排泄チェックをする事により「負けない心」を鍛錬されたと思います。
私は、今まで数千人の利用者のデータ分析をしてきましたが、どう分析してもかなわなかった、あの『晩秋の夜の徘徊おばあさん』が、私の最大の教科書となる人になられるとは思いもよりませんでした。何か因縁を感じます。
 

おわりに

私がおむつに関心を持ってから、試行錯誤の⻑い時間を過ごしながら、職員の気持ちも変化しました。私が一途に利用者さんのおむつデータに正面から向かい合いデータアセスメントをしてからは、排泄プランの提案を求められたり、相談を受けます。職員全員と協力している実感があります。
おむつ汚染データの証拠(エビデンス)の客観的データをもとに、互いの意見から、適切なパッドの選定やトイレ誘導のタイミングが判ります。
どの様にすれば良いのかと、排泄ケアに職員全員が積極的に取り組めました。
新利用者さんの暫定プラン・確定プランまでにも、質のあるデータが入手でき、情報の共有から短時間での「排泄プラン」が作成出来、決定事項は、記録ソフトの申し送りに入力して、変更事項の情報を短時間で全員が共有します。
職員の合意形成がとてもスムーズに運びます。
利用者さんのおむつデータ分析は、排泄自立に向けた、第一歩です。
 
 
「科学的根拠あるプラン」は、客観的データから作成されます。
「証拠=エビデンス」を示す事が重要だと考えます。
 
データの期間は、様子を見ながら継続のデータが望ましいと強く感じます。
プロとしては、短期間だけのデータでは不充分で「たまたま」のデータかもしれない(?)と…考えるのが常識ですよね。
客観的なデータが、排泄プラン時の職員全員の合意形成には、不可欠です。
「夜のカバー汚染が多い様ですが…」‥様ですが?曖昧なデータですよねぇ〜。
週に何度?どんな間隔で起こっているのか?
「証拠=エビデンス」が必要です。
分析しないといけない事はまだまだ沢山あります…。
 
余談ですが、ある職員の夜勤⽇の翌朝のカバー汚染が多い等も判ってしまいます。原因は、パッドの当て方、カバーの装着が正確でないと推測されます。

プロとして、客観的データ「証拠=エビデンス」に基づいた「科学的根拠に裏付けられた排泄プラン」を目指して、週に数回、データ・パトロールをしています。
「おむつデータ分析」は、99,99%の利用者さんの排泄状況の把握に裏切らない結果を出してくれます。
しかしながら、数百人に一人位、困難事例の利用者さんのデータがあります。
 
それを見ながら「今月も勝負!!」と「おむつ」のデータ分析をしています。
排泄の自立に向けた戦いは、明⽇も明後⽇も続きます。
排泄の自立に向けたエネルギーを継続する事を、「おむつ」が助けてくれています。